今回のテーマは関門海峡と新幹線について。
新幹線で小倉駅〜新下関駅を通ったことがある方ならば分かると思うのですが、とにかくトンネルが長いです。
このトンネルは関門海峡の海底も通るわけですが、どこからどこまで続いているのでしょうか?
そして、なぜここまで長いトンネルが作られたのでしょうか?
地図やデータをもとに解説していきます。
気になっていた方は参考にしてください。
関門海峡とトンネル【基本情報】
まずは基本情報から。
関門海峡には1つの橋と3つのトンネルがあります。
こちらが橋とトンネルの地図↑
ご覧いただくと分かる通り、新幹線が通る新関門トンネル(ピンク色の部分)だけが桁違いに長いです。
それもそのはず、この新関門トンネルの全長は18.713km(海底区間は880m)もあるのです。
新幹線のトンネルが長い理由
なぜ新幹線のトンネルはこんなにも長いのでしょうか?
そこには構造上(数字)の理由が挙げられます。
新幹線のトンネルの取付勾配は15‰以下と定められていました。
「‰(パーミル)」とは、線路・トンネルなどで勾配を表す単位のこと。
例えば、「15‰以下」は「水平方向に1000m進む場合、垂直方向へ上がる高さは15m以下」という意味。
トンネルは勾配をつけて海底に降り、海底部分を水平に通過した後、再び上がるというV字構造。
このような条件面を含め、勾配を規定通りの15‰以下以下で抑えるには、トンネルの長さが18.7㎞必要だったのです。
つまり、新関門トンネルの長さ18.713kmというのは、トンネルの取付勾配規定に基づいた必要最小限の長さだったのです。
また、地図を見るとわかる通り、小倉〜新下関の区間には山が多い為、いずれにせよ水平な線路を作るには山を掘る(トンネルを作る)必要性がありました。
がしかし、この話にはちょっとした落ちが。
15‰以下という規定があったものの、実際にできた新関門トンネルの勾配は18‰でした。
この数字は規定の範囲外になってしまうのですが、特例として認定されたようです。
なぜ海底にトンネルが作られた?
では、なぜ線路は海底トンネルになったのでしょうか?
地上に橋をかけるのではダメだったのでしょうか?
これに関しては、様々な要素が挙げられます。
これは関門海峡に限らずの話ですが、海は強い風が吹くことが多いです。
そんな中を高速で新幹線が走るとなると非常に危険。
海に架かる橋の上を新幹線が走れば、強い風の日には「運転見合わせ」なんて可能性も。
そう考えた時、海底トンネルの方が安全・安心だったのです。
また、新関門トンネルが完成する30年ほど前に関門鉄道トンネルという成功例が近くにあったことも大きな要素でした。
新関門トンネルは1970年に着工し1975年に開通したわけですが、近くには既に完成した関門鉄道トンネルがありました。
この関門鉄道トンネルにはJR山陽本線が通り、上下線で別々のトンネルがあるのですが、下り線は1936年に着工し1942年に完成、上り線は1940年に着工し1944年に完成していました。
この成功体験があった為、新幹線のトンネル案も自然と出てきたのです。
ちなみに、関門鉄道トンネルが橋ではなくトンネルになったのには時代背景もありました。
この時はちょうど戦時中。
橋を作ったとしても、敵に攻撃されたらひとたまりもありません。
その為、安全な海底トンネルを掘ったのです。
尚、線路の勾配規定は新幹線と電車によって大きく違います。
新幹線は前述の通り15‰以下なのですが、電車の場合は35‰以下。
これは新幹線の方が速度が速く、緩やかな勾配が求められる為。
関門鉄道トンネルの勾配は下り線が20‰、上り線が25‰となっています。
同じ海底トンネルでも、新幹線と電車でトンネルの長さが違うのはこの勾配規定の違いによるものです。
まとめ
以上、関門海峡と新幹線についてでした。
重要な点をまとめると下記の通りになります↓
- 新幹線が通る新関門トンネルの全長は18.713km
- 勾配規定により、長いトンネルが求められた
それが故、小倉駅〜新下関駅の区間には非常に長いトンネルがあるのです。
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