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「筑紫」の読み方|「ちくし」と「つくし」どっちが正しい?違いは?

博多駅 筑紫口

今回は「筑紫」の読み方について特集します。

福岡県民の多くは「筑紫」という漢字を見ると反射的に「ちくし」と読むはず。

理由は、「筑紫野市」「筑紫口」「筑紫女学園」などのように生活の身近なところに「ちくし」と読むものが多々あるからです。

しかし、他県の人はそうではないようです。

「筑紫」という字を見て「つくし」と読む人も多いんだとか。

複雑な話になるのですが、この「つくし」という読み方は間違えではありません。

事実、「筑紫平野」は「つくしへいや」と読みます。

同じ漢字なのに「ちくし」と「つくし」という2つの読み方。

違いは何なのでしょうか?

「ちくし」と読むパターン

ここからは「筑紫」を「ちくし」「つくし」と読む実際のパターンを見ていきましょう。

まずは「ちくし」から。

下記は「ちくし」と読むパターン

  • 筑紫野市
  • 筑紫高校
  • 筑紫女学園
  • 筑紫丘高校
  • 筑紫台高校
  • 筑紫野中学
  • 筑紫小学校
  • 筑紫野市民図書館
  • 筑紫野市総合公園
  • 筑紫野警察署
  • 福岡大学筑紫病院
  • 筑紫野インターチェンジ
  • 鳥栖筑紫野道路
  • 筑紫神社
  • 筑紫トンネル
  • 筑紫ヶ丘トンネル
  • 筑紫口(博多駅の出入り口)
  • 筑紫駅(天神大牟田線)
  • 筑紫郡(かつて福岡にあった郡)
  • 筑紫村(かつて筑紫郡にあった村)
  • 福岡筑紫野線(福岡県道31号)

※筑紫神社は「ちくし」「つくし」両方で呼ばれることがあるようですが、「筑紫神社前」交差点の英語表記が「Chikushi」である為、今回は「ちくし」の欄に入れています。

 

ご覧の通り、「ちくし」と読むパターンは多岐に渡ります。

市名、学校名、駅名など身近なもので「ちくし」と呼ぶものはたくさんあり、福岡県民にとっては「筑紫」を「ちくし」と呼ぶのは常識みたいなところがあります。

その他、「」を「ちく」と呼ぶパターンは、筑後川、筑後地方、筑前、東筑高校、筑陽学園などでも見られます。

「つくし」と読むパターン

その反面、「筑紫」を「つくし」と呼ぶ場合もあります。

下記は「つくし」と読むパターン

  • 筑紫もち
  • 筑紫国
  • 筑紫平野
  • 筑紫の神

 

「ちくし」に比べるとその数は圧倒的に少ないのですが、「つくし」と読むパータンがあるのも事実。

驚くべきことに「筑紫もち」の正式な読み方は「つくしもち」だそうです。

実際に筑紫もちのパッケージには、「筑紫」の横に小さく平仮名で「つくし」と書いてあります。

恥ずかしながら、私自身ずっと「ちくしもち」と読んでいました。

しかし、パッケージには「つくし」と記載されているものの、「ちくし」「つくし」どちらで呼んでも間違いではないとのこと。

それは筑紫もちを製造する如水庵の公式HPにも記載されています↓

筑紫もちはどちらも正しい読み方です。筑紫もちを昭和52年に発売する際、「ちくし」と「つくし」、どちらの読みがよいか調べたところ、地元の人は「ちくし」と読み、地元以外の方は「つくし」と読むことがわかりました。

郷土歴史家の筑紫豊先生にも相談し、古事記・日本書紀にはすべて「つくし」と書かれていること、日本人のほとんどが(地元以外の人)は「つくし」と読むということで、「つくしもち」とルビをふりました。

しかし、この地に住む私たちは「筑紫」を「ちくし」と読みますので、「ちくしもち」と読んでいただいても構いません。

参照:如水庵HP

福岡県民にとって「筑紫」を「ちくし」と呼ぶのはごく普通のことなのですが、他県の人は「つくし」と呼ぶことが多いようです。

「ちくし」と「つくし」の違い

ここで気になるのが、「ちくし」と「つくし」の違い。

「筑紫」という同じ漢字なのに、なぜ読み方が2パターンあるのでしょうか?

その答えは、前述の如水庵の公式HPに書かれていると言っていいでしょう。

まとめると下記の通りになります↓

  • ちくし」と読むのは、現代の福岡県界隈の人たち。
  • 「つくし」と読むのは、古代の人、及び県外の人。

 

「つくし」と呼ばれる「筑紫国」「筑紫平野」「筑紫の神」などは、古代のもの・古代から続くものです。

それに対し、「ちくし」と呼ばれる「筑紫野市」「筑紫女学園」「筑紫駅」などは、長い歴史で見ると最近できたものになります。

他県の人は「筑」を「つく」と呼ぶことが多いようですが、福岡県民は「ちく」と呼ぶことが多く、それが地名・学校名など身近なところの名称につけられ生活に馴染み、「筑」を「ちく」と呼ぶ文化が根付いたのではないでしょうか?

これは、どこかごぼう天うどんに似ているところがあります。

福岡のうどんと言えば、ごぼう天うどん。

どのうどん屋さんに行ってもごぼう天うどんは定番商品なのですが、福岡から離れたうどん屋さんに行くと、ごぼう天うどんがないどころか、その存在自体を知らない人も多々います。

これと同じ感じで、福岡界隈だけで独自の読み方文化が広まっていったということでしょう。

前述の通り、「筑」を「ちく」と呼ぶのは市名・学校名・駅名などかなり身近なものばかり。

その為、この「ちく」文化が福岡から無くなることは今後ないでしょう。

なぜ福岡では「筑」を「ちく」と呼ぶのか?

なぜ福岡では「筑」を「ちく」と呼ぶのでしょうか?

おそらく、そこには旧国名がかなり大きく関係していると思います。

旧国名とは、昔の日本の地名・行政区画のこと。

平たく言えば、現在の「福岡県」「東京都」「神奈川県」などの47都道府県名のようなもの。

旧国名では福岡は3つの国に分かれており、地名は

  • 筑前(ちくぜん)
  • 筑後(ちくご)
  • 豊前(ぶぜん)

でした。

エリア名というかなり目立つ箇所で「ちく」と呼んでいた為、福岡周辺では今でも「筑」を「ちく」と呼ぶ文化が定着しているのだと思います。

古代と現代での読み方・漢字の違い

ちなみに、同じ地域でも古代と現代で読み方や漢字が違うことはそう珍しいことではありません。

例えば、筑紫野市から程近い太宰府には「太宰府」「大宰府」という2つの漢字表記パターンがあります。

その違いは

  • 太宰府 → 現在の地名を表記する場合
  • 大宰府 → 古代の役所を表記する場合

 

となっています。

例えば、

  • 太宰府 → 太宰府駅、太宰府天満宮、太宰府市役所
  • 大宰府 → 大宰府政庁

 

のような感じです。

このようにいつも何気なく見ている地名・名称でも、調べてみると意外と奥深いことがあります。