かつて炭鉱で栄えた福岡県南部に位置する大牟田市。
その大牟田市は炭鉱の衰退と共に街全体の規模も縮小している。
1959年に約21万人いた人口は、2015年には半分の約12万人にまで減少した。
また、高齢化も顕著だ。全国の高齢化率は28.1%(2018年)なのだが、大牟田市はそれを上回る36.3%を記録している。
その大牟田市もかつては栄えた時期があった。それは前述のように炭鉱で栄えた時期だ。石炭という資源を求め、全国各地から多くの人がやってきて街は活気付いていた。その当時を知る人に聞くと街には大きなデパートもあり、多くの人で賑わっていたそうだ。
今回はその活気付いていた大牟田、そして現在の大牟田、この2つを象徴するものを特集したい。
それは、シャッター街だ。
大牟田には大牟田駅近くと新栄町駅近くに大きな2つの商店街がある。
この2つを見たら過去と現在の大牟田が分かるはずだ。
大牟田駅のシャッター街
まずは大牟田駅と新栄町の間に位置する銀座通り商店街から。
上記の写真は人が少ない早朝に撮ったものではない。夕方6時台に撮影した写真だ。
まさに、過去の繁栄(立派な造り)と現状(人がいない)を象徴する一枚の写真だ。
あくまでも見た感じだが、商店街の7〜8割は閉まっていたように見える。開いているお店があると何のお店だろうかと気になって確認してしまうレベルだ。
不思議なもので人は歩いていないが、かつて盛り上がっていた頃の賑やかな声が今にも聞こえてきそうな感じがする。
新栄町のシャッター街
新栄町駅は大牟田駅の隣の駅だ。
写真は、新栄町駅からすぐの場所。商店街の中心地だ。
ご覧のように、こちらも誰も人がいない。
時折、明かりがついているお店を見ると必要以上に安心感を覚えるほど、それは寂しい雰囲気だ。
切なくも美しいシャッター街
それは、懐かしさだ。
私は栄えていた頃の大牟田を知らない。しかし、なぜかこの商店街は人をノスタルジックな気分にさせるのだ。
昔の看板、長年閉まっているシャッター。そこには明らかに昭和の姿が残っている。少なくとも平成ではない。
この街で青春時代を過ごした訳ではないのに、どこか懐かしい気持ちがそこにはある。
もう一つは空虚感だ。
立派な造りの商店街なのに人が歩いていない。
上記の写真は、人がいなくなるシーンを待って撮ったものではない。本当に人がいなかったのだ。
このようにしっかりとした造りの商店街で、まだ明るい時間帯に人が歩いていないという経験は初めてだ。
それは、今までに味わったことのない不思議な気持ちにさせる。
商店街はまるで大掛かりな映画のセットみたいだ。
そして、そこには切なさ共にどこか美しさがある。
おそらく、美しいと思う感覚は綺麗に区画整備された商店街の構造からくるものだろう。
あくまでも個人的な意見だが、映画などを制作している方でレトロな雰囲気、不思議な世界観を演出したい方にとって、この大牟田の2つの商店街は絶好のロケ地だと思う。
この日、しばらくこの2つの商店街を歩いてたのだが、異世界に迷い込んだかのような気持ちにさえなった。
それを鮮明に映像に捉えると、きっと他にはない世界観を演出できるはずだ。
シャッター街が続く。そこには何もない。しかし、また行きいと思わせる商店街だ。